「兄弟ではない。別カテゴリだ」——これが、Superblast 3を500km、NOVABLAST 6を110km走った私が、この2足に下した結論だ。
週110km、サブ3を目指す33歳ランナーとして、ASICSのBlast系は練習の土台になっている。同じ「BLAST」の名を冠し、同じ8mmドロップ、同じノンプレート。スペック表を並べれば、価格差¥6,600の兄弟モデルにしか見えない。だが実際に履き分けると、両者は同じ棚に並べる靴ではなかった。ロング走はSuperblast 3、EペースジョグはNOVABLAST 6。この線引きに至るまでの根拠を、実走の感覚と走行距離で残す。
- 1足だけ買うならSuperblast 3——¥6,600の差は、対応できる練習の幅で回収できる。ロング走・LT走・クルーズインターバルまで1足で届く
- SB3は「沈み込みからの爆発」——45mm級の厚底を使い切って沈み、その反発で押し出される。走っていて楽しいのはこちらだ
- NB6は「硬めで接地感が薄い」——厚底寄りの数字なのに、足裏に返るのは薄底に近い感触。レスポンスの速さはEVO SLに近い
- 海外評「NB6は機敏で反発的」は半分だけ正しい——機敏さには同意する。だが反発は明確にSB3が上だ。ここは体感が割れた
- 2足持つなら役割は完全に分離できる——ロング走・高強度はSB3、Eペースジョグ以下はNB6。私のローテではこの1本の線で足りている
📊 Specification:数字で見る2足の距離
| 項目 | Superblast 3 | NOVABLAST 6 |
|---|---|---|
| 定価(税込) | ¥26,400 | ¥17,600 |
| 重量(27.0cm) | 約239g | 約249g |
| ヒールスタック | 46.5mm | 41.5mm |
| フォアスタック | 38.5mm | 33.5mm |
| ドロップ | 8mm | 8mm |
| ミッドソール | FF LEAP + FF BLAST+(2層) | FF BLAST MAX + FF TURBO SQUARED(前足部ポッド) |
| プレート | なし | なし |
| 私の走行距離 | 500km超 | 110km |
| 私のサイズ | 26.0cm(通常幅) | 26.0cm(通常幅) |
数値の差は3点に集約される。SB3のほうが5mm厚く、10g軽く、¥6,600高い。厚くて軽い——この組み合わせが、後述する走り味の決定的な差を生む。ドロップは同じ8mm、プレートはどちらもなし。表面上は「同じ思想の兄弟」に見える。だが数値が語らない領域に、この記事の本題がある。
🧬 Genealogy:兄弟に見えて、進化の向きが逆
| 系譜 | 受け継いだもの | 進化の向き |
|---|---|---|
| NOVABLAST 5(原点) | 柔らかいトランポリン感・走る楽しさ | — |
| Superblast 3 | トランポリン感を強化して継承 | 楽しさ・厚み・反発へ(=NB5の超進化系) |
| NOVABLAST 6 | トランポリン感は後退 | 硬さ・接地感・練習の質へ(=実践仕様) |
Blast系列を貫くコンセプトは「トランポリン感」だ。沈み込んで、跳ね返る。この感覚がASICSのこのシリーズを他社と分けている。私がランニングを始めた1足目はNOVABLAST 5で、500〜600kmを共にした。あの柔らかい弾みが、走ることを楽しいと思わせた原体験になっている。
そのコンセプトを完全に引き継いだのはSuperblast 3のほうだ。NB5にあった弾みをより強化し、厚みと軽さを両立させた。一方のNOVABLAST 6は、NB5のトランポリン感をほとんど残していない。代わりに硬さと安定感を得て、練習の質を上げる方向へ舵を切った。
つまり、同じ原点から二手に分かれている。名前の上ではNB5の直系がNB6だが、走り味の上でNB5を継いでいるのはSB3だ。この逆転を理解しないまま「NB5が好きだったから」という理由でNB6を選ぶと、まったく違う系統の靴を掴むことになる。NOVABLAST 6を単体で評価した記事でも同じ結論に至っている。悪い靴ではない。ただ、期待している方向が違う。
🏃 Ride:「沈み込みからの爆発」と「硬さと薄い接地感」
5:00/km前後のEペース帯で、両足を同じような条件で履いている。私のLT Paceは3:57/km。この速度域は完全な有酸素域であり、シューズの素の性格が最も出る。そこで感じた差は、「クッションの硬さ」という一語では説明できない質の違いだった。
Superblast 3:45mmを沈み切って、爆発で返ってくる
SB3の走り味を一言で表すなら「沈み込みからの爆発」だ。ヒール45mm級の厚みがありながら、その厚みを飾りにしていない。着地で一度しっかり沈み込み、沈んだ分だけ強い反発が返ってくる。厚底を使い切っている感覚がある。
そのうえ約239gと軽い。厚み・沈み込み・反発・軽さが同時に成立しているため、走行中の高揚感が明確に高い。「走ることが楽しい」と感じさせる力は、私が所有する全シューズの中でも突出している。NB5で味わったあの感覚の、強化版だ。Superblast 3の単体レビューで「SB2の安定感 × NB5の弾む感覚」と書いたが、500kmを重ねてもこの評価は変わっていない。
NOVABLAST 6:硬く、接地感が薄い。だから機敏
NB6は逆だ。走り出しから硬い。数値上はヒール41.5mmの厚底寄りなのに、足裏に返ってくるのは薄底に近い接地感である。この印象は5kmでも20kmでも変わらなかった。クッションはある。ただ、前面に出てこない。
この硬さは欠点ではなく、性格だ。厚底より薄底のほうが地面からの返りは速い。NB6はその原理に近い挙動をする。ADIZERO EVO SLに似たレスポンスの速さがあり、脚の回転を邪魔しない。「機敏」という評価は、この点に対しては正しい。
海外レビューの「機敏で反発的」を、半分だけ否定する
海外の総合レビューは、NB6の前足部に入ったFF TURBO SQUAREDを根拠に「よりエネルギッシュ」「機敏で反発的」と評価する。私の答えは「機敏には同意、反発的には不同意」だ。
レスポンスの速さと、反発の強さは別の指標である。NB6は接地から離地までが速い。だが「押し出される量」はSB3に及ばない。ペースを上げてもこの順位は入れ替わらなかった。速く走るとNB6の反発も立ち上がるが、SB3の沈み込みからの爆発と並べれば、量として明確に弱い。1つの数値で語ると誤解を生む領域だ。
「機敏さ=反発の強さ」ではない。接地時間の短さを求めるならNB6、押し出される推進力を求めるならSB3。この2つを混同すると、買った後に「思っていたのと違う」が起きる。
⚖️ Comparison:他モデルを含めた立ち位置
2足だけを並べても、ローテーション全体での位置は見えない。私が実際に使用しているモデルを含めて整理する。
| Superblast 3 | NOVABLAST 6 | HYPERBOOST EDGE | ADIZERO EVO SL | Adistar 4 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 重量 | 約239g | 約249g | 約255g | 約224g | 約300g |
| スタック(ヒール) | 46.5mm | 41.5mm | 45mm | 低スタック | 厚め・安定型 |
| 反発の質 | 沈み込みからの爆発 | 速いが量は少ない | 硬めで張りのあるバウンス | ダイレクトで速い | 低〜中・穏やか |
| 接地感 | 厚みに沈み込む | 薄底に近い | 硬めで芯がある | ダイレクト | 安定重視 |
| 主な用途 | ロング走・LT走・クルーズIV | Eペースジョグ・普通のジョグ | ロング走・LT走 | インターバル・速めの常用 | リカバリー・雨の日 |
| SB3との関係 | — | 別カテゴリ。役割が重ならない | ほぼ競合。安定感はEDGEが上 | 速度域で住み分け | 強度域で住み分け |
| 定価 | ¥26,400 | ¥17,600 | ¥24,200 | ¥19,800 | ¥19,800 |
| 購入 | 購入する | 購入する | — | — | — |
SB3の競合はNB6ではない——HYPERBOOST EDGEだ
私のローテーションで、SB3と枠を奪い合っているのはNB6ではない。adidas HYPERBOOST EDGE、そしてMIZUNO NEO VISTA 3だ。いずれも厚みのあるノンプレート系で、ロング走・LT走という同じ用途に手が届く。安定感という一点ではEDGEに分があると感じている。ただしそれはSB3が不安定だという意味ではない。SB3は沈み込みと反発に振った設計であり、揺れは仕様の一部だ。海外レビューはソールフレアを根拠に不安定さを指摘するが、私は500kmを走って接地が破綻したことはない。HYPERBOOST EDGEを実走した記事と読み比べると、この2足の緊張関係が見えるはずだ。
NB6の競合はHYPERBOOST RUN——Eペースの椅子は1つ
一方のNB6が競合しているのは、adidas HYPERBOOST RUNだ。どちらもEペースジョグから普通のジョグまでを守る枠で、硬めの接地感という性格も近い。EVO SLは「勝手にスピードが出る」性格ゆえ、抑えて走りたい日には扱いにくい。その意味でNB6の素直さは、日々のジョグで確かな価値がある。EVO SLとHYPERBOOST RUNを比較した記事で書いた「インターバルと毎日のジョグを分ける」という線引きの、ジョグ側にNB6が並ぶ形になる。
🔁 Rotation:週110kmでの使い分け
| 練習の種類 | 選ぶ靴 | 判断の根拠 |
|---|---|---|
| ロング走(20〜30km超) | Superblast 3 | 厚みと反発で脚を守りながら、走る楽しさが持続する |
| LT走・クルーズインターバル | Superblast 3 | 距離が伸びる高強度でも反発が落ちない |
| Eペースジョグ | NOVABLAST 6 | 素直で扱いやすく、抑えた走りを崩さない |
| 普通のジョグ・つなぎ | NOVABLAST 6 | デイリーの主軸。ここが最も稼働する |
| インターバル・速めの常用 | ADIZERO EVO SL | ダイレクトな反発と軽さ |
| リカバリー・雨の日 | Adistar 4 | 安定感と接地の安心感 |
線引きは驚くほど単純だ。ロング走はSB3、EペースジョグはNB6。この1本の線で、週110kmのほとんどが説明できる。デイリーの主軸はNB6であり、稼働量そのものはNB6のほうが多い。だがSB3は、距離が長い日と強度が高い日という「重い日」を一手に引き受けている。
興味深いのは、NB6を導入してもSB3の使用頻度が下がらなかったことだ。上がってもいない。役割が重なっていないから、互いを侵食しない。これは「同じカテゴリの2足を買うと片方が死ぬ」という買い方の失敗を、構造的に回避できているということでもある。逆に言えば、NB6はSB3の代替にならないし、SB3はNB6の代替にもならない。
なお、脚残りの差は感じていない。20km前後の距離で、踵や内側広筋への負担にどちらが優れるという差は出なかった。距離走の翌日に「この靴だから脚が残った」と言える材料は、現時点で持っていない。判断基準は走り味と用途であって、ダメージの多寡ではない。
⏱️ Durability:400kmの壁と、110km時点の現在地
SB3は500kmを超えた。結論から書くと、400kmを超えたあたりからクッション性と反発の低下を感じ始めた。劇的に死ぬのではない。あの「沈み込みからの爆発」の、爆発側がわずかに鈍る。新品時を知っているからこそ分かる種類の変化だ。ロング走という最も過酷な用途を任せ続けた結果でもある。
NB6は110km時点で、性能面の問題は出ていない。ただし110kmで耐久性を語るのは早計だ。判断材料として持っているのは、NOVABLAST 5で600kmを走った経験である。NB5はFF BLAST MAX単層で、走り込むとヘタりを感じる場面があった。NB6は前足部にFF TURBO SQUAREDと耐摩耗のASICSGRIPが入っている。この構成が寿命にどう効くかは、走行距離が伸び次第この記事に追記する。
💪 Pros & Cons:2足それぞれの得失
| メリット | デメリット |
|---|---|
| SB3:沈み込みからの爆発という唯一性 SB3:厚底なのに約239gの軽さ SB3:ロングから高強度まで1足で届く NB6:Eペースで扱いやすい素直さ NB6:接地から離地までのレスポンスが速い NB6:¥17,600というデイリーの価格 | SB3は400km超で反発の鈍りが出る/NB6はNB5のトランポリン感を求めると肩透かし。反発量ではSB3に届かない |
Superblast 3が勝る点
NOVABLAST 6が勝る点
🎯 Recommendation:1足だけなら、迷わずSuperblast 3
1足だけ買うなら、確実にSuperblast 3を選ぶべきだ。¥6,600の差は確かに小さくない。だが判断すべきは価格差ではなく、その差で何が買えるかである。SB3はロング走に対応し、LT走に対応し、クルーズインターバルにも手が届く。1足で守れる練習の範囲が、そのまま価格差の回収になる。
NB6を1足目に選ぶと、ロング走と高強度をどうするかという問題が残る。結局もう1足が必要になり、合計額はSB3を1足買うより高くつく。走りの幅を広げるという観点で、SB3は外さない選択だ。
NOVABLAST 6を選ぶべき人
すでに厚底のスーパートレーナーを持っていて、日々のジョグを任せる靴を探している人。ここにNB6はきれいに収まる。私のローテーションがまさにその形だ。NEO VISTA 3の検証でも書いたが、同じ役割の靴を重ねても稼働は増えない。役割が空いている枠に入れてこそ、2足目は生きる。
NOVABLAST 6を避けるべき人
NOVABLAST 5のトランポリン感が好きで、その延長を期待している人。NB6は別系統の靴になっている。あの感覚を追うなら、向かうべきはSB3だ。「NB5が良かったからNB6」という買い方は、この世代では成立しない。
📏 Fitting:サイズとフィット感
私はSB3・NB6ともに26.0cmの通常幅を選んでいる。幅・サイズ感に有意な差はない。両者を履き替えても違和感は出なかった。片方のサイズが決まっていれば、もう一方も同じサイズで問題ないというのが実感だ。
安定性についても補足しておく。SB3は高スタックゆえに不安定という指摘があるが、500kmを走った限りでそれを問題として認識したことはない。HYPERBOOST EDGEと比べれば安定感はEDGEが上だ。だがそれは相対評価であって、SB3が不安定だという結論にはならない。
❓ FAQ:よくある質問
- 1足だけ買うなら、Superblast 3とNOVABLAST 6のどちらですか?
-
Superblast 3だ。¥6,600高いが、ロング走・LT走・クルーズインターバルまで1足で対応できる。NB6を選ぶとロングと高強度用にもう1足必要になり、結果的に総額が上がる。対応できる練習の幅で価格差は回収できる。
- NOVABLAST 6はSuperblast 3の廉価版ですか?
-
違う。廉価版ではなく別カテゴリだ。SB3は沈み込みからの爆発で押し出すスーパートレーナー、NB6は硬めで接地感が薄いデイリートレーナー。同じBLASTの名を持つが、走り味の方向が逆を向いている。
- 海外レビューは「NB6のほうが機敏で反発的」と評価していますが、同意しますか?
-
半分だけ同意する。機敏さは事実だ。厚底より薄底のほうが地面からの返りは速く、NB6はその挙動に近い。だが反発の総量ではSB3が明確に上で、ペースを上げても順位は入れ替わらなかった。機敏さと反発の強さは別の指標である。
- Superblast 3の寿命はどのくらいですか?
-
500km走った時点での実感として、400kmを超えたあたりからクッション性と反発の低下を感じ始めた。走行不能になる劣化ではなく、沈み込み後の爆発がわずかに鈍る種類の変化だ。ロング走という重い用途を任せ続けた条件での数字である。
- 2足のサイズ感は同じですか?
-
同じだ。どちらも26.0cmの通常幅を履いており、幅・フィット感に差は感じていない。片方のサイズが決まっていれば、もう一方も同サイズで選んで問題ない。
- 2足とも持つ意味はありますか?
-
ある。役割が重ならないからだ。NB6を導入してもSB3の使用頻度は下がらなかった。ロング走・高強度はSB3、EペースジョグはNB6と分離でき、互いを侵食しない。同カテゴリの2足を買って片方が死ぬ、という失敗が起きにくい組み合わせである。
📝 Conclusion:同じ名前の、別の靴
「BLASTという同じ名を持つ、まったく別の靴」——Superblast 3とNOVABLAST 6の関係を一言で表すなら、これに尽きる。
スペック表は両者を近づける。同じ8mmドロップ、同じノンプレート、5mmのスタック差、10gの重量差。だが500kmと110kmを走った足が返した答えは違った。SB3は厚みを沈み切って爆発させる靴で、NB6は硬さと薄い接地感で脚を速く回す靴だ。進化の向きが逆を向いている。
だからこそ、選び方は単純になる。1足だけならSB3。すでにスーパートレーナーを持っていて日々のジョグ用を足すならNB6。2足持つなら、ロング走はSB3、EペースジョグはNB6。週110kmを回す中で、この線引きは一度も揺らいでいない。
SB3は500kmを超え、400km地点から反発の鈍りが出始めた。NB6は110km。どちらもまだ検証の途中だ。走行距離が伸びた時点で、耐久と摩耗のデータをこの記事に追記する。

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