VO2max 61とフル3:18:44——理論サブ3との「18分45秒」をGarminデータで分解する

VO2max 61とフル3:18:44——理論サブ3との「18分45秒」をGarminデータで分解する

Garminが示すVO2maxは61。一般的な換算式に通せば、フルマラソンの予測タイムは約2時間57分——理論上はサブ3圏内だ。だが私の実測フルPBは3:18:44(板橋Cityマラソン2026)。理論値との差は、18分45秒ある。

陸上経験はほぼない。2025年1月にゼロから走り始め、試行錯誤でメニューを組み、1年強でVO2max 48→61まで到達した。数字が上がったこと自体は素直に嬉しい。だがVO2maxを信用しているわけではない。あれは「相当値」でしかない。問題は、その61という数字と、42.195kmの現実との間に空いた18分45秒の正体だ。本稿では、この差をGarminの実データで分解する。

📌 この記事の結論
  • VO2max 61の「理論フル」は約2時間57分——だが実測は3:18:44。理論と現実の差は18分45秒ある。
  • ギャップはフルだけに集中している——5km・10km・ハーフからの予測はいずれも3:01〜3:05。フルだけがそこから約15分脱落する。
  • エンジン(VO2max)は完成している——板橋の31〜35kmで心拍176bpmを維持。脚も肺も動いていた。止まったのは胃だ。
  • 崩壊点は「脚」から「胃」へ移った——湘南3:34:12は脚、板橋3:18:44は補給。潰すべき課題が一段進んだ証拠だ。
  • 残り18分45秒の鍵は耐久と補給——VO2maxの上積みではない。4:15/kmを保つMP走と、本番強度での補給設計が次の一手だ。
目次

📊 Data:VO2max 61の「理論サブ3」は2時間57分。実測は3:18:44

VO2max 61からフルの予測タイムはいくつになるのか。広く使われる換算式(予測タイム[分]=387.3 − 3.45 × VO2max)に通すと、61は約2時間57分を示す。つまり数字の上では、私はすでにサブ3ラインの内側にいる。にもかかわらず実測フルPBは3:18:44。理論と現実は18分45秒ずれている。

指標数値
VO2max(Garmin)61
換算式によるフル予測約2:56:51
サブ3ライン2:59:59
実測フルPB(公式)3:18:44
理論との差+18分45秒

ここで先に立場を明示しておく。VO2max 61という数字を、私は信用していない。Garminが光学心拍と走行ログから推定した「相当値」であり、研究室の呼気ガス分析で実測した値ではない。61だから何かが保証されるとも思っていない。それでも、陸上経験のない人間が試行錯誤で48から61まで押し上げられたという事実は、トレーニングが効いている証として受け取っている。問題は「数字が高いか低いか」ではなく、「その能力を42.195kmで使い切れているか」だ。そして使い切れていない。18分45秒は、その未達の総量である。

VO2maxを「合格証」として読むと、61は誤った安心を与える。だが「残差の計算式」として読めば、61は出発点になる。エンジンの排気量は足りている。足りていないのは、その排気量を最後まで燃やし切る燃料系統と駆動系だ。次章では、この差がどの距離で発生しているのかを切り分ける。VO2maxという「持っている力」と、レースで出せる「使える力」の差については、VO2max 61の理論値とフル実測を比較した記事でも分析している。

🏃 Analysis:PB階段で見る「ギャップの正体」——フルだけが落ちる

なぜ短中距離は近いのにフルだけ遠いのか。5km・10km・ハーフのPBからRiegel式(T2 = T1 ×(D2/D1)^1.06)でフルを予測すると、いずれも3:01〜3:05に収まる。しかし実測は3:18:44。短中距離の実力から逆算した「あるべきフル」を、現実は約15分下回っている。脱落はフルに集中している。

距離PBペースRiegel式フル予測サブ3との差
5km19:193:52/km約3:05:17+5:18
10km39:253:57/km約3:01:20+1:21
ハーフ1:27:104:08/km約3:01:45+1:46
フル(実測)3:18:444:42/km+18:45

この表は二つのことを同時に語っている。第一に、10kmとハーフからの予測ですらサブ3には1〜2分届かない。つまり短中距離の純粋なスピードも、まだ「完全合格」ではない。あと少し削れば、という距離だ。第二に、そしてこちらが本質だが、フルの実測値は短中距離予測(3:01〜3:05)からさらに約15分も脱落している。スピードの不足が生む差は1〜2分。フル特有の何かが生む差は15分。桁が違う。

5kmや10kmのタイムを見れば「このスピードがあるならサブ3はいけるはず」と思える。私自身もそう感じる。だがその予測と実測の落差が、距離が伸びるほど指数的に開く。サブ3との最大の返りはフルにある。ここが私の課題の中心だ。4:15/kmという速度そのものは、5km・10kmのPBペース(3:52〜3:57/km)から見れば決して速くない。問題は4:15/kmを「42.195km維持し続ける」こと——その筋持久力、体の使い方、終盤までフォームを崩さない能力である。VO2maxを1上げることではない。

⏱️ Case:板橋3:18:44——前半サブ3ペース、止まったのは胃だった

では18分45秒は、レースのどこで失われたのか。板橋Cityマラソンの前半ハーフ通過は1:29:30。ほぼサブ3ペース(4:14/km)で巡航していた。21kmまで脚は完璧に動いていた。崩壊の引き金を引いたのは、脚でも肺でもVO2maxでもない。胃だ。

Fact(事実)。レース直前の30km MP走では、4:15/kmで30kmを走破できていた。だから当日の自信は10段階で5。「無理ではない、あとはコンディション次第」という感覚でスタートした。前半は設計通り、4:14/km前後でハーフを1:29:30。31〜35kmの区間でも心拍は176bpmを維持し、データ上は出力を保てていた。脚の張りはゼロ。3ヶ月取り組んだ内側広筋の問題は、42kmを走っても再発しなかった。

Qualia(感覚)。16km地点から胃に不快感が出始め、21kmで脇腹と心臓のあたりに激痛が走った。以降、補給ジェルは一切受け付けなくなった。脚は動く。呼吸も余裕がある。なのにエネルギーを補充する経路だけが完全に閉じた。「能力はまだ残っているのに、それを供給するラインが断たれた」——この感覚が、フル後半を支配した。

Analysis(考察)。原因は補給設計のミスだ。当日使ったジェルを、本番強度で胃に慣らす作業をしていなかった。予定5回の補給のうち、実行できたのは2回未満。グリコーゲンの枯渇は避けられず、後半のペースは落ちた。脚の耐久という土台は前回より明確に上がっていた。だが、その上に乗る補給という変数で足をすくわれた。補給崩壊の詳細なラップと記録は別途レース分析に記したが、本稿で重要なのは、「VO2maxも脚も仕上がっていたのに、別系統で止まった」という構図そのものだ。

⚖️ Compare:湘南3:34:12 vs 板橋3:18:44——崩壊点が「脚」から「胃」へ

観点湘南国際(12月)板橋City(3月)
タイム3:34:123:18:44
崩壊地点32km21km(胃)/脚は42km持続
崩壊要因脚(内側広筋の張り)胃(補給ミス)
終盤の心拍上げられず失速31〜35kmで176bpm維持
レース後の脚痛みあり張りゼロ・痛みほぼなし

3ヶ月で15分28秒短縮した。だが私が注目するのはタイムの差ではなく、崩壊メカニズムの変化だ。湘南国際では32km地点で脚が止まった。内側広筋の張りが出て、心拍を上げられなくなった。脚という土台が崩れた。一方、板橋では脚は42kmを走り切り、終盤も心拍176bpmを維持できた。止まったのは胃だ。

これは「一つの問題を潰したから、次の問題が見えた」という状態だ。脚の耐久という最も根深い課題は、中殿筋強化・ピッチ走法・シューズ変更を通じて確実に底上げされた。その証拠に、レース後1日で走行を再開できている。崩壊点が「脚」から「胃」へ移ったことは、後退ではなく前進である。VO2maxという数字が同じ61でも、その61を42kmで使い切れる体に近づいている。残った壁は、脚そのものよりも一段「外側」——燃料供給と、終盤のペース維持力に移った。VO2maxを結果に変換するという考え方は「負けない練習」へ移行したサブスリーPJの記事でも軸にしている。

🎯 Next:残り18分45秒を埋める優先順位——耐久が先、補給が次

VO2maxを上げる練習は、もう優先しない。61はサブ3に必要なエンジンを十分に示している。残り18分45秒を埋めるために投資すべきは、能力の上積みではなく、能力を42.195kmで出し切る「使い切り」の精度だ。優先順位は明確にこの順になる。

STEP
MP走の質と量(最優先)

4:15/kmを30km以上維持する耐久を作る。30km×1回の成功では42kmを保証できない。35km、可能なら38kmまでのMP走で「最後の12km」の精度を上げる。これが18分45秒の大半を占める耐久ギャップへの直接の処方だ。閾値の設定根拠はLTHR 179bpm・LT Pace 3:57/kmを活かす閾値走の記事に整理している。

STEP
補給実験(次点)

本番で使うジェルを、本番強度のMP走中に投入して胃を慣らす。Eペースで問題なくても、4:15/kmの強度では消化器が止まる。板橋の最大の敗因はここだ。種類・タイミング・量を事前に検証し、レース当日を「未検証の本番」にしない。

STEP
VO2maxの上積みは狙わない

インターバルで61を62、63に上げることに、今の私のリソースは割かない。理論値はすでにサブ3の内側にある。能力を増やすフェーズは終わり、能力を出し切るフェーズに入っている。数字を追うより、42.195kmで燃やし切る。

VO2max 61は、サブ3の「答え」ではない。だが「どこを直せばいいか」を指し示す座標にはなる。エンジンは足りている。あとは、その出力を42.195kmの最後の1mまで途切れさせない設計——それだけだ。次のレースは、脚でも胃でもなく、戦略を出し切れる状態で迎える。

❓ FAQ:VO2maxとサブ3のよくある疑問

VO2max 61があればサブ3は達成できますか?

理論上は可能だ。換算式ではVO2max 61はフル約2時間57分を示し、サブ3ラインの内側に入る。だが私の実測フルPBは3:18:44で、理論値と18分45秒の差がある。VO2maxは「相当値」であり、達成を保証する数字ではない。エンジンの大きさを示すだけで、それを42.195kmで使い切れるかは別の能力だ。

VO2maxからフルマラソンの予想タイムはどう計算しますか?

簡易には「予測タイム[分]=387.3 − 3.45 × VO2max」で概算できる。VO2max 61なら約2時間57分だ。ただしこれは持久力の天井を示す理論値であり、実測との乖離は大きくなりうる。私の場合、短中距離PBからのRiegel式予測(3:01〜3:05)より、実測フルはさらに約15分遅い。予測式は出発点として使い、実レースで検証するのが現実的だ。

5kmや10kmは速いのに、フルで落ちるのはなぜですか?

距離が伸びるほど、スピード以外の要素が支配的になるからだ。私の場合、5km・10km・ハーフからの予測フルは3:01〜3:05に収まるが、実測は3:18:44。差の主因は、4:15/kmを維持する筋持久力の不足と、補給の失敗だ。短中距離の速さは「素材」であり、それを42.195kmで維持する耐久と燃料管理が別途必要になる。

GarminのVO2maxは信用していいですか?

絶対値や予測タイムは過信しないほうがいい。光学心拍と走行ログからの推定値であり、研究室の実測ではない。ただし、同じ条件で継続記録した場合の「相対的な変化」を追うには有用だ。私は48→61という推移を、トレーニングが効いている証として読んでいる。数字そのものより、上下のトレンドを指標にするのが実用的だ。

VO2maxが頭打ちのとき、次に何を優先すべきですか?

VO2maxの上積みより、「使い切り」の精度だ。私の優先順位は、第一にMP走(4:15/kmを30km以上維持する耐久)、第二に補給実験(本番強度でのジェル検証)。理論値がすでに目標圏内なら、エンジンを大きくするより、その出力を最後まで途切れさせない駆動系と燃料系を磨くほうが、タイムへの返りは大きい。

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この記事を書いた人

RuncersLAB運営。フルマラソンでの目標達成に向けて、論理的かつ科学的なアプローチでトレーニングに励む市民ランナー。 現在は「週110km」の走行をベースに、Vo2MAX61を基準とした独自のメニューを追求中。自身の体験とデータに基づき、42.195kmを「使い切る」ための戦略やギアレビューを発信しています。

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