練習会に頼らず、AIで週間メニューを組みたい市民ランナー向けに、Geminiを「専属コーチ」として使いこなすための設計術をまとめる。私は33歳でランニングを始め、1年でVO2max 48→61、ハーフマラソンのタイムを約30分短縮した。その裏には、「何をAIに教え、何を自分で決めるか」を整理したうえでGeminiにメニューを作らせる、という手順があった。本稿では、そのために必要な「4大要素」と具体的な入力の型を示す。
- Geminiに質の高い週間メニューを作らせるには——基本スペック(プロファイル)・ロジック(制約)・プロジェクト定義(目標)・フィードバック(週次情報)の4要素を分けて渡す。
- 強度とリスクは「ランナープロファイル」から——年齢・走力・故障リスク・シューズ一覧を固定情報として渡すと、E/M/T/Iペースとリスク回避の判断が可能になる。
- 生活との整合は「組み立てルール」で——走れる時間・曜日と、アンカー/リカバリー/ポイント練習/つなぎの優先順位を明文化すると、実行可能な配置になる。
- 目標とフェーズで提案内容が変わる——同じサブ3でも、スピード期かスタミナ期かでメニューが変わる。KGI・KPIと「こだわり」を伝える。
- 週ごとの修正は「フィードバック」で——前週の達成度・RPE・失敗要因・体調・天気・予定を渡すと、現実に即したスライドや強度調整ができる。
📋 市民ランナーがGeminiに教えるべき「4大要素」の全体像
| カテゴリ | 役割 | 更新頻度 |
|---|---|---|
| 基本スペック(ランナープロファイル) | 強度・ペース・リスクの計算基盤 | 固定的(数値更新時のみ) |
| ロジック(スケジュール組み立てルール) | 生活と整合した曜日・時間の配置 | 固定的 |
| プロジェクト定義(目標・戦略) | 何のため・どのフェーズかという指針 | レース・フェーズ変更時 |
| フィードバック(週次アップデート) | 前週の結果と今週の制約 | 毎週 |
練習会に参加していない個人ランナーがAIでメニューを作る場合、「一般論の週間プラン」ではなく、自分のスペック・生活・目標に紐づいたプランが必要だ。そのためには、AIが勝手に決められない部分を人間が明示し、AIが計算・配置できる部分を任せる、という役割分担が効く。上表の4つを「教える情報」として整理し、毎週のプロンプトで参照させる形にすると、再現性の高いメニューが出てくる。以下、各要素の中身と、Geminiにどう渡すかを述べる。
🔧 【基本スペック】ランナープロファイル(固定情報)
Geminiがトレーニングの強度(ペース)とリスク管理を計算するための土台が、ランナープロファイルである。ここが曖昧だと、一般的な「Eペースはゆっくり」程度の提案になり、あなたの今の走力に合ったメニューにならない。
身体データ(スペック)
年齢・身長・体重・体脂肪率を渡す。
Geminiの用途は、VDOT(走力指標)の適正化や回復力の推定のヒントにすることだ。
私の例では33歳、168cm、56.9kg、体脂肪率14.2%などの体組成データを固定情報として持たせている。
体重が変わったらここを更新する。

走力データ(ベンチマーク)
最新の自己ベスト(1km、5km、10km、ハーフ、フル)と、直近の練習での実績タイムを渡す。ここからEペース(ジョグ)・Mペース(マラソン)・Tペース(閾値)・Iペース(インターバル)を逆算させる。
私の場合は5km 19:39、10km 39:25、ハーフ 1:27:09、フル 3:34:12に加え、LTHR 179bpm・LT Pace 3:57/kmを明示している。
こうした数値があると、閾値走の実践やペース設定の根拠をAIにも一貫して持たせられる。
身体特徴・故障リスク(取扱説明書)
足型(幅広・甲高など)、過去の故障歴、現在の不安箇所を書く。Geminiの用途は、「坂道ダッシュはアキレス腱負荷が大きいので回避する」「ポイント練習の翌日は完全休養にする」といったリスク回避の判断基準にすることだ。私には左足踵のハグルンド変形疑いと両足内側広筋の張りがあるため、怪我管理とトレーニング調整の考え方をプロファイルに含め、高負荷の連続や接地負荷の大きいメニューの連発を避けるよう指示している。
使用シューズ(シューズローテーション)
所持シューズ一覧と用途に加え、**「身体的弱点との相性(コンフリクト)」**まで正直に渡すのがコツだ。
私の場合、左踵にハグルンド病(骨隆起)があるため、**「Takumi Sen 11はスピード練習で使うが、ヒールカップが硬くアキレス腱への攻撃性が高いため、連日の着用は禁止」**という厳格なルールをGeminiにインプットしている。こうすることで、AIは「昨日はTakumiでポイント練習をしたので、今日は踵に優しいVomero 18でジョグをしましょう」という、私の痛みを理解した専属トレーナーのような提案をしてくれるようになる。
私の場合はAdios Pro 4(レース・MP)、Takumi Sen 11(スピード・VO2)、Superblast 2/EVO SL(LT・デイリー)、Adistar 4/Vomero 18(リカバリー)という役割分担を伝え、踵に負担がかかる日はリカバリー系を推すよう設定している。
- Takumi Sen 11のヒールカウンターが硬いため疼痛リスクが高い
- ボストン13はタイトな設計で足の痛みが発生した為、利用は中止
📐 【ロジック】スケジュールの組み立てルール(制約条件)
初心者が最も悩み、かつAIが勝手に決められないのが生活との整合性だ。ここをルールとして渡さないと、土曜にロングを入れたいのに平日に長い距離を入れてきたり、休みたい曜日に高強度を提案してきたりする。
生活の制約(Life Constraints)
走れる時間帯と長さ(例:平日は朝1時間のみ、日曜は午前中フリー)、走れない曜日(完全オフにする日)を書く。物理的に実行不可能なメニュー提案を防ぐためだ。
私の場合は、以下のように伝えている。
- 平日はリモートワーク前の朝に90分以内
- 土曜は午前で20km前後まで可能
- 日曜は午前で30kmまで可能
週110kmを維持する方法で述べたように、この「可処分時間」から逆算したボリュームと曜日配分が、メニュー実行可能性の前提になる。
優先順位と配置(Big Rocks Theory)
次の4つをルールとして文章化して渡す。
- アンカー(最優先):1週間で一番時間が取れる日に一番重要なトレーニングを配置する(例:ロング走)
- リカバリー:アンカーの翌日は必ず低強度にする(例:月曜はジョグまたは休養)。
- ポイント練習(質):疲労が抜け、かつ時間が取れる平日に高強度を入れる(例:火・木のいずれかでインターバルやテンポ走)。
- つなぎ(量):それ以外の日で週間目標距離を調整する(Eペースのミドルランなど)。
この順で「まず大きな石を入れる」ようにすると、AIは論理的に曜日を埋められる。土曜をMP走、日曜をロングに固定している私のスケジュールも、このルールをGeminiに渡すことで再現可能になっている。
🎯 【プロジェクト定義】目標と戦略(方針)
| 項目 | 渡す内容の例 |
|---|---|
| 最終目標(KGI) | ターゲットレース名・日付、目標タイム(サブ3など) |
| 現在の強化フェーズ(KPI) | スピード強化期/スタミナ強化期/調整期 |
| 戦略的こだわり | 「週110kmは維持」「ロングは後半ペースアップ重視」など |
何のために走るのか、今は何を鍛える時期なのか、という指針を渡す。同じ「サブ3目標」でも、スピード強化期ならインターバル中心、スタミナ強化期なら距離走・閾値走を厚くする、といった切り替えができる。さらに「週110kmは絶対維持したい」「ロング走は距離より後半のペースアップを重視したい」といったあなたの哲学を書いておくと、一般論ではなくあなた用のカスタマイズになる。私の場合はサブ3をKGIに、現フェーズは「42kmで使い切る」スタミナ・仕上げに近い時期であること、週110km維持とロングの質重視をこだわりとして渡している。
🔄 【フィードバック】週次アップデート情報(変動情報)
毎週のメニュー作成時に、その時点の現在地を渡す。固定のプロファイルとロジックだけでは、先週の疲れや今週の天気・予定は反映されない。
前週の評価
メニューの達成度(完遂か、未達か)、主観的強度(RPE:数値以上にきつかったか、余裕があったか)、失敗の原因(心肺が限界だったか、脚が売り切れたか)を簡潔に書く。Geminiはここから「今週はポイント練習の本数を減らす」「リカバリーを1日増やす」といった修正を提案できる。
コンディション・メンタル・外的要因
疲労の蓄積具合、睡眠の質、やる気(メンタル)、週間天気予報(雨・強風・猛暑)、突発的な仕事や家庭の用事を渡す。「水曜は雨で強風なので、ポイント練習を木曜にスライドしましょう」「金曜は出張のため走れないので、木曜に質を集約してください」といった現実的な修正が可能になる。私もレディネスや睡眠が悪い週は、その数値と主観をそのまま書き、ロングの距離やポイント練習の強度を下げる提案をさせている。
💡 実践のコツ:4要素を「プロンプトの型」に落とす
上記4要素を、毎週使うプロンプトのひな形にしておくのがよい。1回目は「基本スペック」「ロジック」「プロジェクト定義」を長めに書き、2回目以降は「前回のプロファイルを踏まえて」と参照させつつ、「フィードバック」だけを毎週更新する。そうすると、1年でVO2max 48→61・ハーフ約30分短縮したように、個人の制約と目標に沿ったメニューが継続して得られ、練習会に頼らずとも「サブ3品質」の週間設計を再現しやすくなる。データと感覚の両方をAIに伝える姿勢は、データを信じる理由で述べた「数値とクオリアの統合」とも一致する。まずは自分のプロファイルとルールを1枚のメモにまとめ、そこからGemini用のプロンプトを膨らませてみてほしい。
❓ FAQ
- Gemini以外のAI(ChatGPT、Claude等)でも同じ4要素でメニューを作れますか?
-
はい。強度計算・曜日配置・目標に応じた切り替え・週次修正の「設計思想」はモデル非依存です。プロファイルとルールを同じように渡せば、他のLLMでも同様のメニュー作成が可能です。Geminiは無料枠が使いやすく、長いプロンプトにも対応しやすいため本稿では例に挙げています。
- 走力データがまだ少ない(レース経験が少ない)場合はどうすればよいですか?
-
直近の練習タイム(例:5kmを25分で走った、30分ジョグで6:00/kmだった)だけでも渡せます。そこからE/M/T/Iの目安を「やや控えめ」に算出させるよう指示するとよいです。レースが出てきたらPBを追加し、プロファイルを更新していけば精度が上がります。
- 週間目標距離(例:週110km)はどこで伝えればよいですか?
-
「プロジェクト定義」の「戦略的こだわり」に含めるとよいです。「週〇〇kmは維持したい」と明記すれば、AIはつなぎの日やロングの距離を逆算して、その合計が達成されるように配置します。生活制約(走れる時間)と矛盾しない範囲で伝えることが前提です。
- 故障リスクを書いておくと、AIは保守的になりすぎませんか?
-
「〇〇の練習は避ける」「△△の翌日は休養」といった禁止・制約を明確に書けば、AIはそれに従います。逆に「積極的に入れてよい」と書かない限り、過度に保守的になるよりは、リスクを無視した提案のほうが問題になりやすいです。まずは自分の取扱説明書を正直に書き、様子を見ながら緩める方が安全です。
- 毎週同じプロンプトをコピペするのが面倒です。
-
固定部分(プロファイル・ロジック・プロジェクト定義)はノートやドキュメントに1回書いて保存し、毎週更新するのはフィードバック部分だけにすると楽です。Geminiでは「前回の会話を続ける」形で、先週のメニューと結果を参照させつつ「今週のフィードバックは以下」と渡す運用もできます。
最悪、一度作ったメニューを使いまわししても問題ありません。変えたくなっときに相談しましょう。
📝 まとめ
練習会に参加しない個人ランナーが、AIで「自分用」の週間メニューを得るには、基本スペック・ロジック・プロジェクト定義・フィードバックの4要素を分けて渡す設計が有効だ。強度とリスクはプロファイルから、生活との整合は組み立てルールから、提案の方向性は目標とフェーズから、週ごとの微調整はフィードバックから、それぞれ決まる。この型でGeminiにメニューを作らせた結果、私は1年でVO2max 48→61、ハーフを約30分短縮できた。あなたのプロファイルとルールを一度言語化し、専属コーチとしてのAI活用の第一歩にしてもらえれば幸いだ。

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