- サブ3を目標にしてよいかは「気合」ではなくデータで決める——VO2max・LTペース・ハーフの実績・週間距離の4点セットで現在地を評価するべきである
- サブ4→3.5→3.2→サブ3へと目標を上げたのは、スペックが閾値を超えたから——VO2max 59〜61、LTペース4:05/km前後、ハーフ1:33→1:32、週110kmという条件がそろった時点で「サブ3解禁」と判断した
- MPペースは「4:15で走り切れる脚があるか」を中心に設計する——心肺ではなく脚筋力・フォームがボトルネックになっているなら、練習設計の修正でサブ3を狙いにいける
- 目標に縛られず、常に「現在のLTとMPで何km耐えられるか」を見直す——110kmというルールに溺れず、その距離を支える生活とリカバリーをセットでアップデートすることが前提になる
- 読者も自分のログから「サブ3解禁条件」を数値で言語化できる——VO2max・ハーフPB・週間距離から、自分なりのMP候補と目標タイムを導けるようになるのがこの記事のゴールである
Context:サブ4から始まった1年目のロードマップ
私がランニングを始めたのは2025年1月3日である。32歳、走歴ゼロの状態からスタートした。
最初の1か月の走行距離はおよそ200km。Garmin上のVO2maxは52前後。2月第1週、ランニング開始から約1か月でハーフマラソンのタイムトライアルを行い、結果はおよそ1時間50分だった。
このハーフ1時間50分前後という数字が、「サブ4はいけるだろう」という最初の確信になった。フルマラソン換算表やVDOTの一般論を見るまでもなく、自分の脚と心肺の感覚が、サブ4を否定していなかったからである。
この時点では、サブ3という言葉はまだ遠い世界の話だった。あくまで「健康な体を作る」「まずはフルを完走する」「そのうえでサブ4を目指す」という、段階的なロードマップの中の一階層にすぎなかった。

Data:サブ3を許容する現在地スペック
| 指標 | 数値 | サブ3との関係 |
|---|---|---|
| VO2max | 61 | 理論上サブ3圏内。むしろ余裕のある水準 |
| LTHR | 約179bpm | 高強度域の心拍耐性は十分 |
| LT Pace | 約3:57〜4:05/km | サブ3のMP(4:15/km)より明確に速い |
| ハーフPB | 1:32:06(4:22/km) | 理論上はフル3時間前後も見える水準 |
| フルPB | 3:34:12(5:05/km) | スペックに対して明らかに遅い。使い切れていない |
| 週間距離 | 110km | サブ3挑戦の土台として十分なボリューム |
今の私は、VO2max 61、LTHR 179bpm、LT Pace およそ3:57〜4:05/kmというスペックになっている。机上の計算だけをすれば、サブ3は「もう達成していてもおかしくない」側にいる。
一方で、実績として残っているフルマラソンのベストは3:34:12(5:05/km)。ハーフ1:32:06(4:22/km)と並べて見ると、「ハーフに対してフルが明らかに遅い」というギャップが浮き上がる。能力値はサブ3圏内だが、42kmという距離で使い切る技術と脚がまだ足りていないということだ。
週間走行距離は110km。これは感情ではなく、ライフスタイルからの逆算で決めた「質を落とさず確保できる上限値」である。平日の時間制約、Eペースで走った場合の距離、ポイント練習の頻度と回復に必要な睡眠時間。そのすべてを掛け合わせた結果、110kmが数学的な解に落ち着いた。
データだけを見れば、「サブ3を目標にしてはいけない理由」はもはや存在しない。むしろ、「なぜまだ3時間34分なのか」を説明するフェーズに入っている。
Decision:サブ4→3.5→3.2→サブ3へ目標を上げたロジック
目標は、ある日突然サブ4からサブ3にジャンプしたわけではない。私の中では、次の3ステップを踏んでいる。
サブ3.5を目標にしていた頃、ハーフのPBはおよそ1時間33分。4:20/kmというペースでハーフを押し切れるようになっていた。この時点で、「フル4:30/km(3:10〜3:15)を目標にしてもいい」と判断し、横浜マラソンではサブ3.5、湘南国際マラソンでは3時間12分(キロ4:30)を目標に据えた。
湘南国際の結果は3:34:12。目標の3:12とは大きく乖離している。ただし、レース後のログを見たとき、敗因は心肺ではないと分かった。内側広筋の張り、フォームの崩れ、30km以降の脚の持たなさ。「心臓が限界だった」のではなく、「脚とフォームが壊れた」という感覚が残っていた。
もしここで、心拍もVO2maxも限界まで振り切れていたなら、私はサブ3を目標にしなかったと思う。しかし実際には、「スピードと心肺は足りている。42kmでそれを使い切る技術がない」と理解できた。だからこそ、サブ3.2を目標にして失敗した結果をもって、逆にサブ3を解禁したのである。
Method:現在のデータからMPペースを設定する思考プロセス
私はサブ3用のMPを、まずキロ4分15秒と置いた。理由は単純で、サブ3というゴールから逆算したときの自然な数字だからである。ただし、「4:15で走れたらサブ3」という話ではない。重要なのは、4:15/kmでどれだけの距離を、どの心拍で、どの感覚で走れるかだ。
具体的には、次のような入力から判断している。
- VO2max:59〜61のレンジに乗っているか
- LTペース:4:05/km前後か、それより速いか
- ハーフ:4:20/km前後で1時間33分を切れているか
- MP(4:15/km)で:単独走で16km前後を「壊れずに」こなせているか
この4つが揃って初めて、「サブ3を目標にしてよい」と判断した。逆に言えば、どれか1つでも明確に足りていなければ、私はサブ3を口に出さなかったと思う。
読者に勧めたいのは、「自分なりのサブ3解禁条件」を4つ程度の変数で定義することである。VO2maxがいくつ以上、ハーフ何分以内、週間距離何km以上、MP候補ペースで何km走れたら解禁、という自分なりの基準を作る。それがあれば、目標は感情ではなくロジックで上げ下げできる。
Practice:週110kmの中でMPとLTを馴染ませる
現在の週間メニューの中核は、MPとLTの「量」である。具体的には、次のような構成になっている。
- 土曜:MP走16km(4:15/km目標)
- 日曜:ロング走の後半にMP10km前後を挿入
- 木曜:LT走8〜10km(MPより速い帯域)
この3つを合計すると、「MP以上の強度」で週30kmを超える。VO2maxやLTペースがサブ3を許容しているとしても、実際にMPで30km以上走る経験がなければ、本番42kmでそのペースを維持するのは難しい。だからこそ、週110kmというボリュームの中で、MPとLTにどれだけ距離を割くかを意識している。
興味深いのは、距離を増やせば増やすほど「常に疲れている」状態になるわけではなかったことだ。むしろ、疲労の抜ける速度が上がってきた感覚がある。その裏では、睡眠やリカバリーグッズへの投資、食生活の見直しといった「距離を支える生活側のアップデート」も同時に進めている。
週110kmという数字だけを見るとストイックに聞こえるかもしれない。しかし私にとっては、「生活の質を犠牲にせずに走れる最大値」であり、それ以上でもそれ以下でもない。ジャンクマイルを削り、意味のある距離だけを積み上げた結果の110kmである。
Failure:湘南国際3:34:12が教えてくれたこと
| 観点 | 想定していたこと | 実際に起きたこと |
|---|---|---|
| 目標 | 3時間12分(4:30/km)で押し切る | 3時間34分12秒(5:05/km)でゴール |
| ボトルネックの想定 | 心肺・スピードがギリギリ | 内側広筋の張り・フォーム崩れによる脚の崩壊 |
| 原因のイメージ | 「まだ能力が足りない」 | 「能力はあるが、42kmで使い切る技術と脚筋力が足りない」 |
湘南国際マラソンの結果だけを見れば、「目標より22分遅れた大失敗」である。3時間12分を狙って3時間34分。数字だけ見れば、サブ3どころかサブ3.5すら遠いように見える。
しかし、レース中の感覚とレース後のデータは、別のことを示していた。心拍は限界まで振り切れていない。スピードそのものに対する恐怖感もなかった。代わりにあったのは、内側広筋の張りと、フォームが崩れていく感覚だった。
もしここで、「やっぱり自分にはサブ3.2もサブ3も無理だ」と結論づけていたら、この記事は生まれていない。私はそうではなく、「サブ3.2を目標にするのは早すぎたが、サブ3を目標にすること自体は間違いではない」と解釈した。敗因が心肺ではなく脚とフォームにあったからだ。
この失敗をきっかけに、私は目標を下げるのではなく、「4:15/kmというスピードを楽に感じられる脚」を作るプロジェクトとしてサブ3を再定義した。目標タイムではなく、「ペースに対する身体の感覚」を変えることを、中間目標に置き直したのである。
Guide:読者が自分のMPと目標タイムを決める手順
VO2max、ハーフのベストタイム、週間走行距離。この3つをノートに書き出す。VDOT表を眺める前に、自分のデータだけを見て「サブ3圏内かどうか」の感覚を持つ。
4:10〜4:20/kmの中から、自分が「現実的だろう」と思う1本を選ぶ。最初は10〜12kmでもいいので、そのペースで単独走を行い、距離・平均心拍・主観的きつさ(RPE)を必ず記録する。
もし心拍も脚も限界なら、MP候補を少し落とす。余裕があるなら、距離を2〜4kmだけ伸ばす。こうして「MP候補ペース × 距離」の組み合わせを更新し続けることで、自分なりのサブ3解禁条件が浮き上がってくる。
私は、目標そのものにはあまり感情を乗せないようにしている。サブ3もサブ2:30も、あくまで「データから導かれた一つの候補」にすぎない。重要なのは、今日のVO2maxとハーフタイムと週間距離を見たときに、「その目標がロジックとして妥当かどうか」である。
この記事を読み終えたら、ぜひ一度GarminやStravaのログを開いて、自分なりの「サブ3解禁条件」を書き出してみてほしい。そこに、誰かの常識は要らない。必要なのは、あなた自身のデータだけである。
FAQ:よくある質問
- Q. まだVO2maxが55前後ですが、サブ3を目標にしてもいいですか?
-
VO2max 55前後でもサブ3を達成しているランナーは存在するが、私の基準では「VO2max 59〜61」「ハーフ1時間33分前後」「週間80〜100km以上」の3つがそろってからサブ3を解禁した。VO2maxが55なら、まずはサブ3.5〜3.2を狙いながら、VO2maxとハーフの両方をもう一段引き上げることを勧める。
- Q. 週間距離が60km程度しか取れません。それでもサブ3を目指していいでしょうか?
-
週60kmでもサブ3達成は理論上可能だが、「ミスを許容できるバッファ」は小さくなる。私は「生活を壊さずに走れる上限」が110kmだったのでそこまで増やしたが、人によって上限は違う。まずは自分の生活から逆算した上限値を計算し、その範囲でMP走とLT走にどれだけ距離を割けるかを考えるべきだと思う。
- Q. 目標に縛られてしまい、怪我しそうなときはどう考えればいいですか?
-
私も「110kmを達成したい」という気持ちが先行して、無駄に距離を足したくなる瞬間がある。そのたびに、「ルールを目的に練習しない」という自分の憲法に立ち返る。怪我のリスクが上がっていると感じたら、110kmという数字のほうを疑う。目標ではなく、データ(痛み・睡眠・疲労感)を優先して判断するようにしている。


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